カラ占拠でこなした実例のひとつは「アリック東府中」という賃貸マンションだった。ここは建物全体が競売にかけられてしまったのだが、オーナーだった人物が「全戸分の立ち退き料を取ってくれ」とO氏に依頼してきた。すでに不動産業者に競落されており、それぞれの部屋の住人たちはとっくに退去してしまっている。残っていたのはオーナーと関係者が使っていた三部屋だけ。むろん、競落人もその分に関しては立ち退き料を払おうと申し出ていた。
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だが、競売で財産を失ったオーナーは、すべての部屋分をよこせとゴネていたのだ。さっそくO氏は占有屋として入り込むのだが、いかんせん錠がすでに取り替えられていて、他の空き部屋には入ることができなかった。いくらO氏でもこの状況で全戸分の立ち退き料を要求するのは不可能だ。こうなるとオーナーが直接管理している三部屋を占有し、あとは立ち退き料の上乗せを狙うしか手はない。定石どおり荷物を搬入し、人間を出入りさせることで、相手に妨害行為を見せつけることにした。建物ごと転売しようと考えていた競落人にとっては迷惑このうえない。交渉を繰り返し、一戸あたり百万円で話は落ち着いた。オーナーの思惑どおりにはならなかったものの三百万円で手を打ち、O氏はその半分、百五十万円を受け取った。立ち退き料として手に入る額としてはけっして悪くない。さして長期間占有していたわけではなったのだから。